「小説」の記事一覧(2 / 3ページ)

小説「ユートピア」3

 教祖を失った子羊たち  自〇した教授の遺産。最後の岬の家族への助言、指導、  すなわち、『岬を残して家族3人で家を出ること。』  このいわば、教祖の遺言は、教祖の昇天によって、信者はその行き先、航路を失った。  結果、・・・

小説「ユートピア」2

 分断家族  この、まるで見知らぬ老女。姉、浩子の変わり果てた姿に言葉を失う。  原因は明白だった。認知症であろう母、高齢の恵子の介護がもたらした結果だ。  おそらく、想像を絶する苦労の結果なのだろう。  この姉、浩子が・・・

小説「ユートピア」1

 下層階級  そこは、いわゆる団地であった。団地という言葉のイメージそのまま。つまり、昭和の頃のニュータウンと言う名の公団住宅。  同じ形をした箱型の3階から4階程度の狭い居住区の集合体。それが、狭苦しく3棟並んで立って・・・

不定期連載小説7・最終回

 王女様のご帰還  夏休みにはまだ早いが、今度の日曜日に妹の多加代が急に帰ってくることになった。  今は奈良女子大学の学生寮生活をしている。一日だけの里帰りだ。  そういえば、瞳はこの実の妹、多加代にはまだ一度も会ってい・・・

不定期連載小説6

 初デート  瞳はその日の昼間の出来事が、頭から離れなかった。   この店・瞳の生家『成海屋(なるみや)』の主人であり、そして父である成海 徳二(とくじ)からの瞳への突然の申し出。  「それでな、瞳。・・・お前もうちの養・・・

不定期連載小説5

 弟  その子は、早速粘土に取りついた。瞳が何か教える前に、もうすぐに自分で粘土と取り組み始めた。  練り台は、少し高すぎるのか、自分で勝手に手ごろな木箱を持ってきて、その上に乗っかって粘土をひたすらいじり始めた。  最・・・

不定期連載小説4

 夫の面影  「君のご亭主。寛さんは本当にやさしいいい人だったんだ。」  兄貴は、言った。  そう、わたしの夫、寛さんは、やさしい人だった。瞳は富山時代の二人のささやかで、あまりにも短かった結婚生活を思い出していた。  ・・・

不定期連載小説3

 土練り  陶器を扱うこの店は、今や「何でも屋」の様相。  戦後復興の活況。毎日けっこう生活道具を求めてお客がやってくる。瞳も一人前の使用人としてお客接待にも慣れてきた。忙しい日々だった。  「あら、初めて見る顔だね。新・・・

不定期連載小説2

 兄さん、との再会だった。  まさか、あの電話の相手が兄さんだったとは。  お互い全く気付かなかった。  今、こうして実際に再会しても、わたしが姪の瞳だとはさすがの兄貴でも気が付かない様子だ。  そうだった、叔父・つまり・・・

不定期連載小説1

 かけおち  気にかけたこともなかったが、あらためてみてみると、大きな店構えだった。 不思議と懐かしいとかいった感情は湧かない。まるで、昨日までここにいたかのようだ。瞳は今、十数年かぶりに自分の生まれ育った生家の前にいた・・・

このページの先頭へ