わたしはトムキャット・やすらぎを求めて 最終回
瞳は、総理への報告任務を終えて大阪八尾空港に一時帰還した。
行きは、八尾空港の民間航空会社のプライベートジェットだったが、今回は、妹の成海 多加代 航空自衛隊中尉(二等空尉)の RIO(Rader Intercept Officer:レーダー迎撃士官)を伴ったF14Dトムキャットでの帰還である。
帰りに、特殊任務を命令されたのである。
火浦さん、これまた急にどうしたんだね。
大佐、実は、今日あの二人、成海姉妹がここに帰ってくる予定です。F14Dでの特殊任務帰りなんですよ。日比野指令もご一緒する予定です。
ほおー。指令もご一緒ですか。
そうなんですよ。それでね、お願いなんですけど、他の客がいるとちょっとね。やばい話が出てしまうかもしれないんで、その辺のところお願いいたします。
ああ、成程ね。まあ、この店は、見てくれと違って盗聴の心配は無いからな。駐屯地が徹底的に対策してくれたからね。ちょっとした秘密基地だな。
ええ、ここも軍事施設の一部。ああ、これも軍事機密ですね。
分かったよ、他のお客には「借り切り」ってことにしておくよ。
ご迷惑おかけして申し訳ありません。
任務完了
瞳。何か大変だったみたいだね。 (店主)
そうなのよ、マスター。ああ、ここへ帰ってくると本当にほっとするわ。(瞳)
おねえちゃん。ここのコーヒー美味しいね。(多加代)
そうでしょ。多加代。ケーキも美味しいのよ。
日比野指令もよくこの店に来られるんですか。
ああ、瞳二尉と一緒によくお邪魔してるよ。うちの隊員たちも常連だしな。しかし、今回は本当に大変だったな。(日比野指令)
そうなんですよ。総理からのいきなりの命令でしたから、帰りは厚木基地へ直行でした。自衛隊のジープみたいな車両で。乗り心地なんか行きの時の政府専用車とは大違い。まあ、自衛隊員がたくさん付いてくれていたから安心でしたけど。
わたしも百里からいきなり呼び出されてびっくりだった。おねえちゃんより先に作戦内容は伝えられてはいたけど。
F14D スーパートムキャットの秘密
どうして、全機退役したはずのF14Dトムキャットが存在するのか。しかも日本の在日米軍基地である厚木基地に。
実は、隠密に2機のF14Dが飛行可能状態で日本に存在する。それも、日本の整備管理よって最高レベルのメンテナンスを受けている。整備を請け負うのはK重工の傘下「日本航空機株式会社」である。
この会社は、在日米軍機のメンテナンスを請け負う会社だ。在日米軍機の整備、修理などは実際には日本の企業が行っている。むしろ、アメリカ本国の整備より技術力は優秀なのである。
しかし、なぜかつてこの厚木基地をホームベースとしていたVF-154『ブラックナイツ』のF14Aではなくて、F14Dなのか。
その主な要因は、エンジンである。F14Aのエンジン強力換装型であるF14Dの搭載エンジン、ゼネラル・エレクトリックF110-GE-400は、実は、基本的には三菱F2のIHI・F110と同じものなのだ。もちろん、完全に同じものではないが、互換性は日本の整備技術により確保されている。少なくとも、F14Aのプラット・アンド・ホイットニーTF-30よりも、部品確保が容易で、かつまた性能的にも完全に優れているこのIHI・F110のエンジン、それが、ほぼそのまま使えるという機体メンテナンス上のメリットは計り知れない。
この強力型エンジン搭載のF14Dは、大型であるにもかかわらず強力なエンジン推力のおかげで、小型で機動性に優れたF16Cファルコンと互角の機動性を確保している。
さらに、このF14Dは、レーダーシステム、アビオニクス(戦術支援システム)も完全にデジタル化されており、特にレーダーは従来のAWG-9からAPG-71に改良されている。
機体自体は、第4世代の旧型機であり、ステルス性は全く無く、逆に探知範囲が200kmにも達する強力な索敵レーダーは、相手側に対してサーチライトを浴びせるがごとくに自機の存在を知らしめるものでもある。
だがしかし、これを逆手にとり、強力すぎるミサイルシステムなどとともに、使いようによっては相手側には、強力な脅威であることは間違いない。事実、いまだにトムキャットの退役は早すぎたという意見が米国専門家の間でも大半である。
特殊任務
おねえちゃん。今回の任務ってさ。あ、言っちゃいけないんだ。
ここではいいのよね。マスター。(瞳)
まあな、日比野指令が完全に盗聴、傍受、監視をブロックしてくれたんだよ。この店全体をな。
ああ、まあ、大がかりで大変な予算がかかった。しかし今は国難といえる状況だからな、内閣から直々のお許しがあった、というより、特殊命令かな。(日比野指令)
本当なんですか。指令。(多加代)
そう、戦術というのは、より巧妙に、高度に進化している。この店で作戦が練られることもある。
へえー驚き。
それが、今の日本を取り巻く状況なんだよ。
瞳たちは、今回、トムキャットで尖閣まで行ったわけだな。相手側どうだった。(店主)
まあ、やっぱり、ビビってたね。何せ、米軍機だからね。この前みたいなロックオンなんて、米軍機には絶対にできない、ていうのは分かってるし。それに多分、機種も分からなかったかも。F14がまだ飛んでるなんてもう向こうは絶対に信じられないだろうから。何かの間違いって思っただろうな。
だろうな。しかしまあ、派手な哨戒任務だったんだな。(店主)
そうよ。尖閣は日本のれっきとした領土なんだから。
了
*これは小説であり、この小説の人物、団体等は実在のものとは何ら関係はありません。





