わたしはトムキャット・さよならみんな2
駐屯地司令官室
「鏡がですか。あの鏡瞳二尉がですか。」
「そうだ。火浦二佐。」
「司令、あの鏡二尉が泣くなんて自分には信じられませんよ。あの男勝りが。」
「泣いていた。実はな、この司令棟から見えるんだよ。学校の特別室にいる彼女が。ときどき、一人で泣いていた。まあ、軍御用達の高精度双眼鏡だから観えるんだが。」
この駐屯地の司令、日比野一等陸佐は司令官室の窓際に立つ火浦飛行隊長に答えた。
「司令はよくそうやって覗いていた、いや、失礼しました。学校の方をご覧になっていたんですか。」
日比野司令は司令官室の自分のデスクでコーヒーを飲んでいる。
「実はな、これも任務だったんだよ。まあ、わたしが直接観察していたわけじゃない。任務を受けた隊員が映像を持ってくるんだ。」
「司令、それがNSCの任務だったと。」
教育問題・教師の負担、保護者の負担
「火浦二佐。教師はブラック業だと聞いたことがあるだろう。」
「ええもちろん。でも司令。今の社会、どこでも、どんな仕事でも苦労はつきものですよ。ブラックといえば全部そうなんじゃないですか。」
「それは確かにそうなんだ。でも、この教師のブラック化には注意すべきことがある。」
「というと。」
「文部科学省が公表した調査によると、学校の先生(教育職員)で、うつ病などの精神疾患で休職した人は、R2年度5,180人で、過去最多となった令和元年度(5,478人)よりは少し減ったものの、依然として高止まりした状況が続いている。つまりここ14年間、ずっと毎年約5千人が精神疾患で休職という状態だ。(Yahooニュース・2021/12/22(水) 15:00より) つまり、明らかに異常なんだよ。特に精神疾患によるというところがな。しかも、文科省のデータだ。実際にはもっとこれの何倍もの教師が苦しんでいると考えられる。」
「司令がおっしゃることは分かるんですが、自分にはこれがどれほど深刻なことなのかよく分かりません。」
「そこなんだよ。火浦二佐。だがな、これはな、この問題はだ。明らかに国防に関わっているんだよ。」
「どういうことです。」
「たとえば、火浦二佐。ある国、某国とでもしておこう。その某国が日本を弱体化させようと企んだとする。まず、いきなり軍事攻撃、軍事的行使は無い。これは言える。だから、あれこれ工作をすることになる。官僚やら政治家に取り入ってくるとかいう小細工もすでに当然しているだろう。」
「自分もそう思います。」
「どこを狙うと思うかね。」
「そりゃ、中枢の有力な中央省庁、官公庁の役人やら、馬鹿な政治家でしょうな。」
「そうだろう。NSCはもうそういった動きをすでに感知している。しかしだ。役人やら政治家といった老人連中は遅かれ早かれ老いぼれの役立たずになる。じきに用済みになる。」
「おっしゃる通りです。」
「でも、もしもだ。某国が教育を狙っているとしたらどうかね。」
「どういうことです。」
「教育は国家の100年の計に関わってくる。未来を担う世代だ。今後の日本の半世紀以上を支える世代だよ。某国がこの世代を取り込もうと考えたとしたらどうかね。」
*この内容はフィクションであり、実在のものとは何ら関係はありません。